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2022.11.21

腫瘍マーカーでがんを発見できる?

受診された方から、「がんが心配だから腫瘍マーカーをチェックして欲しい」「人間ドックで腫瘍マーカーが高いと指摘された」と言われることがあります。

腫瘍マーカーでがんを発見できるのか?
答えは、腫瘍マーカーで早期がんを発見することはほとんど不可能です。仮に腫瘍マーカーが高く、それが、がんが原因で上昇しているとすれば、すでにそれなりの進行がんになっていることが多いのです。なかには腫瘍マーカーが上昇していなくても進行がんが存在することもあります。

早期のうちにがんを発見するためには、消化器領域であれば、胃カメラ、大腸カメラ、超音波検査などの検査で頻度の高いがんのチェックを定期的に行うことが望ましいです。
ただし、腫瘍マーカーのなかでも、PSAは前立腺がんを早期に発見することができる可能性があります。ある程度の年齢になると各自治体で行われている前立腺がん検診を受けることができます。採血で測定できるのでおすすめの検査です。

では腫瘍マーカーはどのようなときに測定するのが効果的なのでしょうか。
腫瘍マーカーは、体内のがん細胞の量により増減する傾向があります。よって、がんと診断されて、ある種の腫瘍マーカーが上昇していれば、その治療効果判定の参考なります。あるいは、手術後の経過観察中の再発の発見の参考にもなります。

それでも人間ドックで腫瘍マーカーを測りたいという方は結構多いのです。
確かに、腫瘍マーカーを測っていたためにがんを発見できたということは、私も経験があります。よって、腫瘍マーカーを測定することが全く意味のないこととは言いません。大切なことは、どんながんの腫瘍マーカーなのか、その腫瘍マーカーはどんな場合に偽陽性(がんがないのに異常値になる)になるのかなどを理解することが大切です。

ただ、私の立場からすれば、偽陽性の可能性が高くても、陽性と言われた方を精査しないわけにはいきません。それこそ実際にがんが潜んでいる可能性を否定できませんし、何より陽性と言われたままですと、受診された方の不安を払しょくすることができないからです。

以下、質問を受けることが多い腫瘍マーカー3種類について簡単にご説明します。

● SCC抗原

肺がん、食道がん、口腔がん、上顎がん、子宮頸がんなどで陽性になります。SCC抗原は正常な扁平上皮(皮膚・呼吸器など)にも存在しているため、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、慢性気管支炎などの呼吸器疾患でも上昇します。「人間ドックでSCCが高いと指摘された」と受診された方で、皮膚を拝見するとアトピー性皮膚炎だったということはしばしば経験します。

● CEA

胃がん、大腸がん、膵臓がんなどの消化器疾患で陽性になることが多く、肺がん、卵巣がん、乳がんでも高値になることがあります。
喫煙、加齢、肝硬変、糖尿病などで偽陽性になることがあり、しばしば相談を受けます。

● CA19-9

消化器がん、特に膵臓がん、胆道がんで高値になります。
胆道感染、膵炎、肝炎、気管支拡張症などで偽陽性になることがあります。

~まとめ~

・腫瘍マーカーで早期がんを発見することはほとんど不可能(前立腺がん以外)。
・腫瘍マーカーが陽性でも、がんが原因でないこともある。
・腫瘍マーカーが陰性でも、100%がんの存在を否定できない。
つまり、腫瘍マーカーは、がんの診断を受けていない方にとっては、あくまでも補助的な検査項目と考えてください。

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