潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に罹患している方には、継続的な内科的治療を必要とします。5 -アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®など)は炎症性腸疾患に対する基本治療薬であり、副作用がなければ非常に有用で扱いやすい薬です。
しかし、5-ASA不耐症といって、5-ASA製剤に対して、発熱、下痢、血便、腹痛などのアレルギー症状を呈する「不耐」が年々増加しており、11%に不耐があるという報告があります。( Hiraoka, S. et al.:J Gastroenterol Hepatol. 2021;36(1):137-143.)。
5-ASA製剤に対する「不耐」の症状は、炎症性腸疾患が悪化した時と似たような症状を呈することがあります。典型的には、「5-ASA製剤を開始直後はいままで悩んでいた下痢や血便がよくなってきたのに、1~2週間経ったら、急に発熱、下痢、血便、腹痛が出てきた…」のような症状と経過です。そのような場合には5-ASA不耐を疑い5-ASA製剤を中止しますが、それでも症状が続く場合には、病気の増悪の可能性などもあり、方針決定に苦慮する場合があります。
5-ASA不耐症とされた場合、軽症であれば脱感作療法(少量から開始して少しずつ増やす方法)を行うことや、寛解導入のためにステロイド(一時的)、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬などを使うこともあります。
5-ASA製剤が使えないからといって治療法がないわけではありません。病気の重症度、生活スタイル、背景(既往歴、妊娠の有無など)も考慮して治療法を決めることになります。
念のため繰り返しになりますが、5-ASA製剤は、炎症性腸疾患の治療の基本で、潰瘍性大腸炎の40%以上は5-ASA製剤のみでコントロールできる有用なくすりです。経験のある医師のもとで服用すれば、決しておそれるような薬ではありません。